私は以下の理由から、「任意後見制度」のご利用を強くお勧めします。
① 自己決定権の尊重の理念に基づく制度である点
任意後見の性質は「契約」であり、本人がお願いしたい人に自由にお願いすることができます。親しい友人や、いつも世話になっている施設の職員さんなど、任意後見人となる方が承諾さえすれば何方にでもお願いすることができます。
一方法定後見では、家庭裁判所が後見人を選任するため、自分の好きな人にお願いをすることはできません。まだ判断能力があるうちに、自分の世話をしてくれる人を決めておくことで、安心して万が一の事態に備えることができる。これが任意後見制度の一番大きいメリットです。
② 任意後見人の監督ができる
本人が任意後見人を自由に選べるからとは言えども、判断能力が劣ってからちゃんと働いてくれるか、不安が残ります。任意後見制度の下では、家庭裁判所が「後見監督人」を選任し、任意後見人が適切に事務処理を行っているか監督します。これにより本人のさらなる保護につながり、安心して任意後見制度を利用することができます。
③ 任意後見契約の内容を自由に決めることができる
原則として契約は当事者の間でその内容を自由に決めることができます。また、任意後見契約と一緒に締結する事務委任契約に本人の細かい要望を盛り込むことも可能です。たとえば認知症になったとき、飼っているペットに関することや、孫が小学校に入学するときに祝い金を与えることなども契約書に入れることができます。